くうきあなのはなし

愛は孤独を救わない

ロシャス、ビザーンスの思い出

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私が人生で初めて出会った香水というのは、多分、ロシャスのビザーンスだと思う。

金色のラベルと青い透き通ったグラスが綺麗で、中でたぷたぷと香水が揺れていたのを思い出す。

 

母は化粧をしない人で、私が幼稚園に通うまで基礎化粧品もしたことがなかったし、子育ての中で化粧をつけることを嫌がる人だった。

それが、お土産にこの香水をいただいて、お風呂上がりにたまにつけていた。

だから、このビザーンスの甘ったるいオリエンタルノートは私の幼少期の思い出だ。プルーストのマドレーヌのように。

 

それがあるとき、母の棚を整理していたらすっかり中も蒸発して何と無く濃厚そうになったその子が出てきた。

それ以来、ふと香水というものに目覚めたのだと思う。

古くなっていても、香りはほとんど幼い頃に嗅いだものと変わらなかった気がする。

 

残量僅かだったので、入手したいと思い調べると廃盤とのことでがっかりした。

似た香りを探して、Diorのプワゾンなど行き当たったけれど、思い出の中にはあのロシャスの輝く黄金のラベルがあって、やっぱり同じボトルじゃないと嫌だと思った。

それで、輸入店など探してオンラインで購入した。

 

プワゾンが似てるというレベルに、要はバブル期に流行った香りで、これでもかという甘いオリエンタルなので、香りそのものはありきたりなのかもしれない。

それでも、お風呂上がりに優しく私の髪の毛を乾かし、すいてくれた母の手の思い出があるから、私はオリエンタルノートに蠱惑的な女というよりも優しい母を感じる。

 

今でも、COCOのような甘いマダム臭に包まれて眠るのが好きだ。

思い出は、香りと共に。

これからの春の時期には、今度はCHANCEを思い出すと思う。