ゲランの顛末
ゲランには、日本人の名前を冠した有名な香水がある。
その名もミツコ。
香調はシプレという、柑橘系+樹木系というもので、1919年発売(多分)、第一次世界大戦やん…という代物。
ちなみに、ニューシネマパラダイスの最後、葬儀のシーンで看板が映り込んでいる。
当然古臭い香りなのは承知だけど、祖母の名前と同じなので、ずーっと気になっていた。
店頭で試香した限りではそこまで嫌いな香りではなかったのだが、ゲランの香水というのはいかんせん高価で、特にパルファムになると学生に手が出せる代物ではなくなる。
で、メルカリで小さなパルファムが売られていたので、千円で入手。
元々シプレは好みではないし、でも祖母と同じ名前の香水を手元に置きたかった。そんな気持ちで入手した代物。
保管状況も不明であるし、変色も著しかったので、きっと出品者さんの箪笥に眠っていたものなのだろうと思う。
で、今日はとりあえずつけてみて。
香りたちは良かったのだが、どんどん「おじいちゃん」の香りになってしまった。
香水は人の体温により香りたちも違うし、変性していると思われる状況では本来とは違う形になることもあろうが、ミツコはよく「お香のにおい」「着物に合う」と形容されているのに、なんとまあ真逆になってしまった。
挙句の果てには、母からは「トイレの洗剤の匂い」と呼ばれてしまう。
私にはむしろ、おじいちゃんの部屋の匂いに感じていた。
祖母のにおいが、祖父になってしまった。
そういうわけで、残念ながら、纏える香りではなさそうなので、「祖母」には引き出しの中に居てもらおうと思う。