くうきあなのはなし

愛は孤独を救わない

遠い人へ

精神科での研修を先日終えました。

精神科の病気は、患者さんの社会的背景、普段の生活、家族関係などが絡み合っていて、それによって「現在の病状」や「今後の方針」が決まる、という特徴を持っています。

診察時にも上記のようなものに加え、生育歴(発達障害の影響など考えるとき)を聞いたりと、患者さんにとっては、とてもプライベートなところに失礼するわけですね。

普通は心の距離が縮まってから行うようなものを、治療のためということで、医者という立場を「利用」しながら、インタビューしていきます。

そうすると、逆のことが成り立つと言えばいいでしょうか。プライベートに割り込むことで、互いの心の距離が縮まるような感触があります。

そして、私はまだ研修医ですので、ローテする立場だから、一ヶ月単位で病院を変わっていきますし、自分のことを気に入ってくれた患者さんとのお別れもやってきます。

今日で最終日なんです、と告げると泣いてしまう患者さんもいらっしゃいました。

そういうのも、悩みを分かち合い、話を傾聴することで出来る絆あってことなのだな、と思います。

担当した患者さんは退院できるところまで見守りたかった。そう思います。心から回復を応援した患者さん、上手く退院できたかな、とか。

でも、現状の精神疾患は厳しくて、家族の支援もないから退院することも出来ないという患者さんもいらっしゃいます。研修先で担当患者さんの退院の目処を聞いたら、「誰でも退院できるわけじゃないんだよ」と言われたことがあり、そうなんだなあ、としみじみと寂しく思いました。

あの人もあの人も、元気にしていてくれるかなあ。元気になってね。