くうきあなのはなし

愛は孤独を救わない

いちごと微分

私はいちごが大好きだ。小さい時から。

ある日、母がいちごをお皿にてんこ盛りにして、二階にいる父に渡しておいでと言った。

ところが、父は「おい、あのいちご何だったんだ?」と母に言ったのだ。

 

てんこ盛りだったから、一個くらい食べてもバレないだろうと思って、食べた。

階段一段、一段上がるごとに、目の前のいちごから一個減ってもバレないだろうと思って、ちょっと食べた。

 

そしたらまあ、見事にいちごは微分されてしまった。

一段で一個でも13階段あったら13個減る。

幼い私にそんな計算、できるまい。

いちごという誘惑を目の前にして。

 

父はそのΔいちごを目撃してしまったわけである。

 

今はそんな恐ろしい計算はできないが、私にはメロン一個に対し半分が与えられるようになった。

これぞ一人っ子核家族の特権也。