くうきあなのはなし

愛は孤独を救わない

「僕らが漁師だったころ」

読み終わったので。

奇しくも叔父が同じ本を買っていたらしい。

 

狂人が不吉な予言によりある家族を崩壊させる、そういう物語。

 

狂人の予言は、本当の予知だったのか、それともただの妄言だったのか、それは分からない。けれど実際に、家族はその通りに崩壊して行く。

「兄弟に殺されるだろう」なんて言われてしまえば、それはそれは恐ろしいだろうけれども、でも、その絆が確かだったなら、そんなことないよね、と笑いあえたはずなのだ。

長兄がその言葉を深く、深く信じてしまうことによって家族たちの絆にほころびが見え始める。でも、彼が信じてしまったから迷信が本当になってしまったなんて思いたくない。狂人アブルは実際に予言者だったのだろうと思う。

 

物語の大半を費やして語られる家族の崩壊と、ただ一人「生き残った」ベンが旅だった兄たちを彼の中に収束するかのように立ち向かって行くラストのコントラストが眩しい。

漁師だったころの、彼らの勇気と、確かな絆で兄弟たちは結ばれていた。

「弟」に過ぎなかったベンが「兄」へと成長する瞬間でもある。

ベンと同時に、兄へなる覚悟と後ろにいる兄たちの姿の力強さ、神々しい光を見たような気がする。