退廃的美への憧れ
薄明かりの中で春を売る女性の暗さとか、そういう儚さとか、文学少女みたいな、山口小夜子さんみたいな美しい方が人間がチェリーなんぞの煙草をふかしているような姿が好きだ。
坂口安吾も好きだ。
だけど、自分はそういう風には生きられない。
堅実に医学部なんて入って、真言宗をそこそこ真面目に信仰して、家族や友人が大切。
夢はマイホームを建ててほのぼのした家庭を築くこと。
退廃的な美を求め、自らもその中にどっぷり浸かってしまおうとすると、それこそストリップのお姉さんに囲まれた永井荷風のようにしかなるしかないし、女性ならきっと誰かの愛人になるのだろう。
そういう生活を自分は望んでいないし、そういう生活の危うい幸せを知っている。
涙の裏にあるから、幸せが輝くのだ。
自分が実直な人間だから、そういうものに憧れを抱くのだろうと思う。